長引く強い痛みやしびれで、
日常生活に支障をきたしていませんか?
当院では、お薬やブロック注射、リハビリなどの保存的治療で十分な効果が得られない方や、ご高齢などの理由で全身麻酔による大掛かりな手術が難しい方に向けた選択肢の一つとして、「脊髄刺激療法(SCS:Spinal Cord Stimulation)」をご提案しています。
脳神経外科・脊椎脊髄外科・慢性疼痛診療の知見を活かし、「どこに行ってもなかなか良くならない」とお悩みの患者様に対する難治性疼痛の専門的な治療の窓口として、SCSを含めた総合的な疼痛診療に取り組んでおります。
脊髄刺激療法(SCS)とは
脊髄刺激療法(SCS)は、背骨の中(硬膜外腔)に細い電極(リード)を通し、微弱な電気刺激を送ることで、脳へ伝わる痛みの信号をやわらげる治療法です。 痛みを完全に取り除くものではありませんが、痛みを和らげることで日常動作の改善や、痛みに気を取られずに過ごせる時間の増加といったQOL(生活の質)の向上を目指す治療法として、国内外のガイドラインにも位置づけられています。
- 【参考】
- 日本ペインクリニック学会「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン」/International Neuromodulation Society(INS)各種推奨 等
※効果には個人差があり、すべての方に同様の結果が得られるものではありません。
SCSの4つの大きな特長
1. お試し(トライアル)ができる
機器を完全に植え込む前に、約1週間の「試験刺激」期間を設けることで、患者様ご自身で痛みの緩和効果を確認いただけます。
2. 元の状態に戻すことができる(可逆性)
組織を破壊したり、将来の別の手術の妨げになったりすることは基本的にありません。万が一、試験刺激で十分な効果が感じられない場合や、治療が不要になった場合には、機器の抜去が可能です。
※状態によっては完全抜去が難しいケースもあります。
3. 刺激強度・パターンをご自身で調整可能
日々の痛みの変化や活動状況に合わせて、患者様ご自身が専用のリモコンを使い、刺激の強さやパターンを調整できます。
4. 鎮痛薬の減量が期待できる場合があります
痛みが和らぐことで、継続的に服用している鎮痛薬の量を減らせる可能性があり、眠気や胃腸障害などの副作用の軽減につながる場合があります。
※効果には個人差があります。
対象となる主な疾患・症状
保険適用のもと、以下のような様々な治療を受けても改善が得られない慢性難治性疼痛に対応しております。当院では脊椎疾患由来の痛みのみならず、神経障害性疼痛全般に幅広く対応しております。
SCSの主な保険適用疾患
- 帯状疱疹後神経痛
- 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
- 末梢血行障害(ASO等)に伴う痛み
- 脊椎術後疼痛症候群(FBSS:脊椎手術後も残る腰や下肢の痛み・しびれ)
当院で対応可能な脊椎疾患由来の痛み
- 臨床所見と画像所見が一致しない非特異的腰痛
- 固定術や椎体形成術(BKP)などの適応とならない、または希望されない腰下肢痛
- パーキンソン病に伴う腰痛(特に安静時痛)
- 全身麻酔ができない、または多椎間固定を避けたい方の脊柱管狭窄症
治療にあたり知っておいていただきたいこと
(合併症・リスク)
SCSは全世界で長年行われている治療法ですが、いかなる医療行為にも一定のリスクが伴います。主なものは以下の通りです。
- 感染(リード刺入部・IPG(刺激装置)ポケット部)
- リード(電極)の位置ずれ、断線、機器不具合
- 硬膜穿刺による頭痛、稀に硬膜外血腫
- 刺激感の変化、想定と異なる部位への刺激
- 電磁干渉(一部の機器・検査環境で影響を受ける可能性)
- MRI撮像時のメーカー指定条件の遵守が必要
禁忌および慎重に判断が必要な方
- 心臓ペースメーカー・植込み型除細動器(ICD)を装着されている方 … 機器同士の相互干渉のリスクがあるため、原則として併用禁忌となります(機種・条件により個別判断となる場合があります)。
- 妊娠中の方 … 妊娠中の新規導入や刺激継続は、胎児への影響が十分に確立されていないため、原則として控える方針です。すでにSCSを植込み済みで妊娠が判明した場合は、主治医と相談のうえ刺激設定を調整いたします。
- 挙児希望のある女性の方 … 挙児希望自体はSCSの適応除外にはなりません。妊娠を計画されている場合や妊娠が判明した場合は事前にご相談ください。
- 機械操作が困難な方(重度の認知機能低下等) … ご自身またはご家族による機器管理が難しい場合は、安全性の観点から適応外となる場合があります。
詳細は診察時に、機器の添付文書および独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の公開情報に基づいて丁寧にご説明いたします。
費用(保険適用)について
SCSは健康保険適用の治療です。トライアル・植込み手術ともに保険診療の対象となり、多くの方に高額療養費制度をご利用いただけます。自己負担額の目安や制度のご案内は、診察時に個別にご説明いたします。
治療の流れ
治療目標の設定から術後のフォローアップまで、患者様に寄り添い一貫したサポートを行います。
※入院および手術は、設備の整った提携先の医療機関にて行います。
標準的な流れ(2段階法:トライアルを経て本植込み)
- 治療目標の設定:痛みの部位に心地よい刺激が届き、痛みの緩和や日常生活・身体機能の改善が得られるか、医師と一緒に目標を設定します。
- 試験刺激(トライアル)のためのリード挿入:提携先の医療機関にご入院いただき、局所麻酔下で硬膜外腔に電極(リード)を一時的に挿入します。
- 試験刺激期間(約1週間):患者様ご自身で効果的な設定を試すことが可能です。
- 効果判定:治療目標である日常生活や身体機能の改善が得られたかを判定します。
- 刺激装置本体の植込み:トライアルで十分な効果が得られた場合、提携先の医療機関にて小型の刺激装置を植え込む手術を行います。
- 手術後・退院後管理(当院でのフォロー):退院後は当院に定期的にご通院いただき、機器の刺激調整(プログラミング)や痛みの管理を時間をかけて行います。
ワンショット(一期的)植込みという選択肢
症例によっては、試験刺激(トライアル)の期間を設けず、一度の手術でリード挿入と刺激装置本体の植込みを同時に行う「ワンショット(一期的)植込み」を選択する場合があります。
主に、以下のような場合にご相談・ご提案いたします。
- 入院期間を短くしたい、または2回の入院がご負担となる場合
- 過去のSCS治療歴や画像所見から、有効性が十分に見込まれる場合
- ご高齢等の理由で複数回の手術を避けたい場合
- その他、患者様の生活背景や全身状態を踏まえて医師が適切と判断した場合
※ワンショット植込みは、トライアルによる効果確認の過程を省略するため、適応の見極めがより慎重に必要となります。標準的な2段階法とワンショット植込みのいずれを選択するかは、痛みの状態や全身状態、生活背景等を踏まえ、医師とご相談のうえ決定いたします。
当院の診療体制の特徴
院内で一貫した診療体制
痛みの治療は「背骨の診断は整形外科」「SCSの手術や機器調整は脳神経外科」「注射や飲み薬は麻酔科・ペインクリニック」と複数の科にまたがることが多く、「どこに相談すればよいかわからない」というお声を伺うことがあります。当院では、これら複数領域の知見を院長が院内で統合してご提供し、通院のご負担軽減を心がけております。
提携病院とのシームレスな連携体制
入院およびSCSの手術(リード挿入・機器の植え込み)は、高度な設備を持つ近隣の提携病院にて行います。退院後の刺激調整や痛みのケアは、通い慣れた当院で行うという役割分担を整えております。
SCS植込み後の「MRI検査」に対応
SCSデバイスを植え込むと、一般のMRI検査を受ける際にメーカー指定の条件遵守が必要となります。当院はメーカーの専用講習を受講したスタッフを配置しており、SCS植込み後の患者様についても、メーカー指定の条件下でのMRI撮影に対応しております。導入している1.5T(テスラ)MRI(富士フイルム社製)を用い、術後の頭部・脊椎の画像フォローに対応可能です。
ご家族にもご相談いただきやすい「土曜SCS専門外来」
機器の調整や治療方針のご相談など、ご家族様のご同伴が望ましいケースも多くあります。平日のご同伴が難しいご家族様にもご配慮いただけるよう、土曜日にもSCS専門外来を設けております。
※診療枠:第2土曜日午前、第3木曜日午前を予定。
【ご参考】静岡県内のSCS植込み後MRI撮像対応施設
SCS植込み後のMRI撮影については、メーカーの専用オンライントレーニングを受講した施設で対応可能です。以下は、当院で把握している静岡県内の対応可能施設です(順不同・情報は変更となる場合があります)。
現在SCS植込み手術を実施している、または過去に実施実績のある施設
- 聖隷浜松病院
- 浜松医科大学附属病院
- 中東遠総合医療センター
- 藤枝平成病院
- 岡本石井病院
- 順天堂静岡医院
- 聖隷三方原病院
- 国際医療福祉熱海病院
※上記施設は、放射線科スタッフもオンライントレーニング受講済みで、SCS植込み後のMRI撮像に対応しています。
上記以外で、SCS植込み後MRI撮像に対応可能と把握している施設
- JA静岡厚生連遠州病院
- 浜松医療センター
- 浜松労災病院
- 静岡赤十字病院
- 富士宮市立病院
- 富士市立中央病院
- 静岡がんセンター
- 静岡県立総合病院
- 静岡医療センター
- 藤枝市立総合病院
- 焼津市立病院
※最新の対応状況は各施設へ直接お問い合わせください。当院はクリニックとして、静岡県西部エリアでSCS植込み後MRI撮影に対応する医療機関の一つです。
医療関係者の方へ:脊髄刺激療法(SCS)への取り組み
地域の先生方におかれましては、平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。 当院は、脳神経外科・脊椎脊髄外科・ペインクリニックの専門知見を融合し、地域の「痛みの最後の砦」としての役割を担うべく、難治性疼痛に対するニューロモジュレーション治療(脊髄刺激療法:SCS)の受け皿として、地域医療への貢献に取り組んでおります。
貴院からご紹介いただく際のメリット
シームレスな病診連携(入院・手術と外来の役割分担)
患者様の入院、およびリード挿入・IPG植え込みの手術は近隣の提携病院にて行い、退院後の外来における刺激調整(プログラミング)や内服調整は当院にて責任を持って実施いたします。明確な役割分担により、安全な手術環境と、術後のきめ細やかなフォローアップ体制の両立を図っております。
専門医による集学的アプローチを院内で完結
脊椎疾患由来の難治性疼痛においては、主病の評価(整形外科領域)、SCSの適応判断およびプログラミング(脳神経外科領域)、ブロック注射や漢方等の薬物療法(麻酔科領域)と、複数科にまたがる集学的アプローチが不可欠です。当院では、これらを院長が包括して診療可能な体制を整えており、速やかな疼痛管理につなげることを目指しております。
1.5T MRI完備と専用講習受講による術後の安全な画像フォロー
SCS植え込み後の患者様はMRI撮影に一定のハードルが生じますが、当院はメーカーの専用オンライントレーニングを受講したスタッフを配置し、SCSデバイス植え込み後についてもメーカー指定条件下でのMRI撮影に完全対応しております。当院の1.5T MRI(富士フイルム社製)を用い、安全な環境で画像診断を実施できますので、他院でSCSを導入された患者様の画像フォローアップにも対応可能です。
土曜外来による家族同伴への配慮
高齢患者様のプログラミング調整やインフォームド・コンセント取得において、キーパーソンとなるご家族様の同伴を得やすいよう、土曜日にもSCS専門外来を設置しております。
当院におけるSCSの適応について
SCSは、帯状疱疹後神経痛・複合性局所疼痛症候群(CRPS)や末梢血行障害(ASO等)をはじめとする幅広い難治性疼痛が保険適用となります。当院では、これら神経障害性疼痛全般に対するSCS治療に幅広く対応しております。薬物療法や神経ブロックで十分な効果が得られない症例がございましたら、ぜひご紹介いただければ幸いです。
加えて、院長の専門領域である脊椎脊髄外科の知見を活かし、脊椎疾患由来の難治性疼痛に対しても、以下の目安で適応を慎重に見極めております。
術式選択:2段階法とワンショット(一期的)植込み
当院では、原則として試験刺激(トライアル)による効果確認を経て本植込みに移行する2段階法を標準としておりますが、症例に応じてワンショット(一期的)植込みも選択肢としてご提案しております。
- 【ワンショット植込みを検討する主なケース】
- 複数回の入院・手術が身体的・社会的に大きな負担となる症例
- 過去のSCS治療歴や臨床所見から、有効性が十分に見込まれる症例
- 刺激設定の見込みが立ちやすく、リード留置位置が想定しやすい症例
- 高齢等の理由でトライアル期間中の管理リスクを避けたい症例
- ※ワンショット植込みは効果判定の機会が省略されるため、事前の適応評価をより慎重に行います。ご紹介時に貴院での経過・所見をご共有いただけますと幸いです。
脊椎疾患におけるSCS適応の目安
| 適応の 目安 |
主な対象疾患・ 状態の例 |
臨床的背景・ 判断基準 |
|---|---|---|
| 良い適応 (○) |
85歳以上の高齢者、責任病巣の特定が困難な非特異的腰痛、3椎間以上の多椎間病変、パーキンソン病由来の腰痛(安静時痛)、脊椎術後疼痛症候群(FBSS) | 局所麻酔での対応が可能であり、全身麻酔や侵襲の大きな根治術を避けたい症例において高い有用性が期待されます。 |
| 慎重な判断 (△) |
神経障害(筋力低下、膀胱直腸障害)を伴う例、重度のアライメント不良や強い回旋変形、黄色靭帯骨化や重度の脊柱管狭窄、挙児希望のある女性(妊娠成立時の対応を事前に協議) | 除圧術などの根治術を優先すべき状態、または正中へのリード留置や至適位置への誘導が解剖学的に困難な症例。挙児希望例では妊娠中の刺激管理方針を事前に共有します。 |
| 適応外 (×) |
トライアル(試験刺激)無効例、機械操作が困難な方(認知症等)、妊娠中の方、心臓ペースメーカー・ICD装着者等の併用禁忌に該当する方 | 患者様ご自身(またはご家族)による的確な機器管理が困難な場合は、安全性の観点から適応外と判断いたします。(※訪問看護で対応可能な場合は要相談) |
- 【出典・参考情報】
- 日本ペインクリニック学会「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン」
- 日本脊髄外科学会 各種指針
- 使用機器の添付文書、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)公開情報
- International Neuromodulation Society (INS) 各種推奨
- ※本ページの内容は医療広告ガイドライン(厚生労働省)に準拠し、一般的な情報提供を目的としています。個別の治療適応・効果・リスクにつきましては、必ず診察のうえ担当医が判断いたします。

