骨粗鬆症外来について
骨粗鬆症は、年齢を重ねるにつれて身近になる病気ですが、単に「骨が弱くなる」だけにとどまらず、健康寿命に大きく関わる疾患です。ちょっとした転倒などでも骨折しやすくなることで、歩く力や日常生活の動作が大きく低下し、最悪の場合、寝たきりになってしまうこともあります。特に背骨や太もものつけ根の骨折はその後の生活の質に大きな影響を及ぼすため、症状が出てからではなく早い段階で気づき、予防や治療につなげることが大切です。
当院ではこのような骨粗鬆症の影響の大きさを踏まえ、骨粗鬆症の治療や予防に注力した骨粗鬆症外来を設けています。患者さまの骨の状態を正しく評価したうえで、生活習慣の見直しや薬物治療を組み合わせ、骨折を防ぎ、できるだけ長く自分らしい生活を続けていただくことを目指します。
腰痛や背中の痛みがある方、年齢とともに身長が縮んできたと感じる方、転びやすくなった方、さらに将来の骨折が心配な方もお気軽にご相談ください。
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは骨の量が減り、骨の質も低下することで、骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。骨は一度できたらそのままではなく、古い骨を壊して新しい骨に入れ替える働きをくり返していますが、加齢や閉経、栄養不足、運動不足、喫煙、飲酒、特定の病気や薬の影響などによってこのバランスが崩れると骨が弱くなっていきます。特に女性は閉経後に女性ホルモンが減少することで骨量が急激に低下しやすく、骨粗鬆症になりやすいことが知られています。
また、骨粗鬆症は初期には自覚症状が乏しいことも少なくありません。そのため、気づかないうちに進行し、転倒したときだけでなく、少し尻もちをついた、重いものを持った、くしゃみをした、といったことだけで骨折してしまう場合があります。
こうした骨折は背骨、手首、太もものつけ根などに起こりやすく、一度骨折すると次の骨折リスクも高まるため、早めの評価と治療が重要です。高齢の方、閉経後の女性、やせている方、骨粗鬆症のご家族がいる方、ステロイド薬を長く使っている方などは骨粗鬆症の検査を受けておくことをお勧めします。
骨粗鬆症の検査(DEXA法)
骨粗鬆症の検査でまず基本となるのは骨密度検査です。この検査では、骨の強さの目安となる骨量を調べます。
現在、主に行われている骨密度の検査法には、以下のようなものがあります。
| DEXA (デキサ) 法 |
2つの異なるエネルギーのX線を利用し、主に大腿骨近位部や腰椎の骨密度を正確に測定します。 |
|---|---|
| 超音波法 | 踵や脛の骨に超音波を当てて測定します。X線を用いないため、妊娠中の方でも測定することができます。 |
| MD (エムディ) 法 |
X線により、手の骨と厚さの異なるアルミニウム板とを同時に撮影し、骨とアルミニウムの濃度の比較によって測定します。 |
当院ではこのうちのDEXA(デキサ)法による検査を行っています。
骨粗鬆症の検査としては他に背骨の圧迫骨折の有無を確認するためのX線検査、骨の代謝の状態をみる血液検査や尿検査などがあります。
DEXA法による精密な骨密度測定を実施
当院で採用しているDEXAとはDual-energy X-ray Absorptiometry の頭文字をとったもので、エネルギーの低い2種類のX線を腰椎や大腿骨などの骨に照射し、骨とほかの組織との吸収率の差で骨密度を算出する検査法のことです。
DEXA法は骨折と特に関係の深い腰椎や大腿骨近位部の骨密度を正確に測定でき、骨粗鬆症の診断や骨折リスク評価ではスタンダードと位置づけられています。
これに対し超音波法は主にかかとの骨などを簡便に調べる方法で、放射線を使わず検診には向いていますが、診断そのものや治療前後の細かな変化の判定には限界があります。
またMD法は手の骨をX線で測る比較的簡便な方法ですが、DEXA法ほど診断精度が高くなく、薬物治療による骨密度の改善を評価しにくいとされています。
つまり、超音波法やMD法は骨粗鬆症を“見つけるきっかけ”の検査としては有用でも、きちんと診断し、治療方針を決め、経過を追うにはDEXA法のほうが優位であると考えられます。そのため、医療機関で骨粗鬆症をしっかり評価したい場合には、DEXA法による検査が望ましいと言えるでしょう。
骨粗鬆症の診断
検査で得られた数値を、YAMと呼ばれる基準の何%に相当するかによって骨密度の診断を行います。YAMとはYoung Adult Meanの略で、若年成人平均値のことです。
腰椎は20~44歳、大腿骨近位部は20~29歳の数値がYAMとなります。
測定の結果、骨密度がYAMの80%以上なら正常、70%以上80%未満なら骨量減少、70%未満であれば骨粗鬆症と診断されます。
またYAM値が80%以上でも、脆弱性骨折のうち「脊椎圧迫骨折」「大腿骨近位部骨折(転子部)」がある、もしくは脆弱性骨折のうち「脊椎圧迫骨折」「大腿骨近位部骨折(転子部以外)」があり、YAM値が80%以下である、という場合も、骨粗鬆症と診断されます。
骨粗鬆症の治療・予防
骨粗鬆症は一度の治療で終わるものではなく、定期的な評価を行いながら、骨折予防につながる治療を続けていくことが重要です。当院では患者さまの状態を見極めながら、投薬による治療や生活指導を行っていきます。
薬物治療
骨粗鬆症の薬物療法は骨折を防ぎ、これからの生活を守るための大切な治療です。一般的によく使われるお薬にはまず骨が壊れすぎるのを抑えるビスホスホネート製剤があり、代表的なものにアレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸などがあります。内服薬や注射薬があり、骨密度の低下を抑え、骨折予防が期待できます。
次に同じく骨吸収を抑える注射薬としてデノスマブ(プラリア)があり、継続的な治療によって骨密度の改善が期待されます。骨代謝を整える補助的な薬として、活性型ビタミンD3製剤のエルデカルシトールやアルファカルシドールなどが用いられることもあります。さらに骨折リスクが高い方では、骨をつくる力を高めるテリパラチドやロモソズマブなどが検討されることがあります。
こうした治療薬は骨密度の値だけでなく、年齢、骨折歴、腎機能、ほかの病気、内服と注射のどちらが続けやすいかなどを踏まえて選んでいくことが大切です。
当院では患者さま一人ひとりの状態や生活背景に合わせて、適切な投薬を行っていきます。
生活指導
骨粗鬆症の治療や予防では、投薬だけでなく、毎日の生活を見直すこともとても大切です。
まず食事では骨の材料となるカルシウムを意識し、乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜などをバランスよく取り入れることが勧められます。あわせてカルシウムの吸収を助けるビタミンDを意識し、魚、きのこ類、卵などを取り入れることも大切です。極端な食事制限や偏った食生活は骨を弱くする原因になるため注意が必要です。
また、適度な運動は骨に刺激を与え、筋力やバランス能力を保つことで、転倒や骨折の予防につながります。無理のない範囲での歩行、軽い筋力トレーニング、体操などを継続することが大切です。
転びにくい生活環境を整えることも重要で、室内の段差、滑りやすい床、暗い廊下などには注意が必要です。喫煙や過度の飲酒も骨に悪影響を及ぼすため、見直しが勧められます。
こうした生活指導についても患者さまそれぞれの、年齢、体力、食事内容、生活環境、これまでの骨折歴などを踏まえ、お一人おひとりに合わせて無理のない形でご提案していきます。