顔の痛み
顔の痛みといっても、さまざまな症状があります。頬やあご、こめかみ、目のまわりがズキズキ痛むこともあれば、ピリッと電気が走るように痛むこともあります。また、焼けるような痛み、重だるい痛み、歯が痛いように感じる痛みとして現れることもあります。
さらに痛みの原因もひとつではありません。顔の感覚には三叉神経をはじめとした神経が深く関わっているため、神経の刺激や障害によって痛みが起こることがありますし、帯状疱疹のあとに痛みが残ることもあります。さらに、歯に原因がないのに歯痛のように感じるケースや、はっきりした異常が見つからないのに続く、慢性的な顔の痛みもあります。
このような顔の痛みでお悩みの場合、歯科、耳鼻咽喉科、脳神経外科など、どこを受診すればよいか迷われる方も多いでしょう。当院では、どの診療科を受診しようか迷われている、顔の痛みでお悩みの患者さまの相談を受け付けています。
「歯の治療をしても痛みが続く」「洗顔や歯みがき、会話などのちょっとした刺激で顔が強く痛む」「帯状疱疹が治ったのに顔の痛みだけが残っている」「検査では異常がないと言われたのに、つらい痛みが続いている」といった場合にはお気軽に受診ください。
こうした症状は我慢を続けることで生活の質が大きく下がってしまうこともあるため、早めの相談が大切です。
帯状疱疹後神経痛(PHN)(顔面神経痛)
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹が治ったあとにも神経の痛みが残る状態です。顔面神経痛と呼ばれるものの多くはこの帯状疱疹後神経痛で、顔面神経の炎症により痛みが続きます。
帯状疱疹の原因となるのは、水ぼうそうの原因ウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)です。
子供の頃に罹患した、このウイルスが神経に長く潜んでいて、加齢や免疫力の低下などをきっかけに再び活動することで帯状疱疹が発症します。帯状疱疹は主に体の片側の神経に沿ってピリピリした痛みと赤い発疹、水ぶくれが現れるのが特徴で、顔の神経でも発症する場合があります。
帯状疱疹から帯状疱疹後神経痛になる患者さまの確率は約7~25%とされており、特に50歳以上では約20%が移行するという報告もあります。リスク要因としては加齢や帯状疱疹の初期症状が重かった場合、過剰な飲酒、ストレス、免疫力の低下などが挙げられています。
顔の神経で帯状疱疹後神経痛を発症すると、額、まぶた、頬などにヒリヒリ、ピリピリ、焼けるような痛みが長く続くことがあります。触れるだけで強く痛む、衣類や風が当たるだけでもつらいといったこともあり、睡眠や日常生活に大きな影響が出ることがあります。また視力障害や難聴を引き起こす場合もあり、注意が必要です。
治療としては、鎮痛薬や神経性疼痛緩和薬(プレガバリン)等による薬物療法や、神経ブロック注射など、痛みに対する処置が行われます。早い段階から適切な治療を行っていくことが重要になります。
三叉神経痛
三叉神経痛は顔の感覚を脳へ伝える三叉神経に関連して起こる神経痛で、顔の片側に電気が走るような、あるいは針で突かれるような、非常に強い痛みが突然起こるのが特徴です。
痛みは数秒から数分と短いことが多い一方で、何度もくり返し起こり、食事、会話、洗顔、歯みがき、ひげそり、風が当たることなど、軽い刺激がきっかけになることがあります。
主に頬から顎にかけて、鼻の付け根の両側、口の周辺など神経の通り道が痛むようになります。
痛みが起こる仕組みはまだはっきりとは解明されていませんが、三叉神経の根元に脳血管が当たることによって起こる場合があると考えられています。そのほかには神経鞘腫や多発性硬化症、帯状疱疹、副鼻腔炎などの疾患が原因になることもあると言われています。
歯の痛みや副鼻腔の痛みとも間違われることがありますが、典型的には片側性で、発作的に強い痛みが起こる点が特徴です。
治療としてはカルバマゼピンなど抗てんかん薬で神経痛にも効果がある薬剤での薬物療法が有効とされています。眠気やふらつきなど副作用が出やすいため慎重な使用が求められます。
非定型顔面痛
顔の痛みが続いているにもかかわらず、三叉神経痛などではなく、器質的な原因がはっきりしないタイプの顔面痛を非定型顔面痛と呼ぶ場合があります。痛み方はズーンと重い、鈍い、圧迫されるような感じ、じわじわ広がるような感じなど様々で、痛む場所も頬、あご、口のまわりなど、はっきりしないことがあります。数秒の発作ではなく、長く続く慢性的な痛みとして感じられることが多く、日によって強さが変わることもあります。
自律神経の乱れが関係しているとも言われており、うつ病や自律神経失調症の方に多くみられるとされていますが、脳血管障害や三叉神経末梢枝の障害といった原因も考えられています。検査で異常が発見されないのに痛みが続くため、周囲の理解が得られなかったり、不安が強くなってしまったりすることもある疾患です。
当院ではまず患者さまのお話をよく伺い、ほかの原因を丁寧に除外しながら、患者さま一人ひとりに対し、治療方針を立てていきます。
治療は長期にわたる可能性もあるため、しっかりとコミュニケーションをとりながら、治療を進めていきます。
治療法としては三叉神経痛と同様にカルバマゼピンや、セロトニン神経を調整する抗うつ薬が有効であるケースがあります。メンタルの要素が大きいと判断されれば、心療内科や精神科の専門医療機関と連携することもあります。また神経ブロック注射/ハイドロリリース注射による治療が検討されることもあります。
非歯原性歯痛
非歯原性歯痛は、歯や歯茎そのものに明らかな原因がないにもかかわらず、歯が痛いように感じる状態です。むし歯や歯周病が原因でないため、歯科治療を受けても痛みは改善しません。患者さまの中には、歯が原因と判断されて抜髄や抜歯を行ってしまったが、痛みが改善しなかった、という例もあります。
症状は歯がズキズキする、噛むと痛い感じがする、歯の奥がうずく、治療した歯がいつまでも痛いなどさまざまで、歯の病気との見分けが重要になります。
原因としては、以下の8つにまとめられています。
- 筋・筋膜性歯痛
- 食いしばりや歯ぎしりなどによる、咬筋などの筋肉と筋膜の痛みが歯の痛みとして感じられることがあります。
- 神経障害性歯痛
- 三叉神経痛や帯状疱疹後神経痛などにより歯の近くの神経が障害されて歯痛となる場合があります。
- 神経血管性歯痛
- 片頭痛や群発頭痛など神経血管性頭痛の関連痛として、歯痛が生じることがあります。
- 上顎洞性歯痛
- 副鼻腔で最も大きな上顎洞に急性の炎症が起きることで、関連痛として歯痛が引き起こされる場合があります。
- 心臓性歯痛
- 狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患で、心筋からの関連痛として歯痛が生じることがあります。
- 精神疾患または心理社会的要因による歯痛
- うつ病や不安症、統合失調症などの精神疾患や、ストレスの影響で歯痛が現れることがあります。
- 特発性歯痛
- 画像検査などを行っても器質的異常が認められず、原因がわからない歯痛です。
多くの場合、抜歯など歯科治療をきっかけとして発症することがあります。 - その他さまざまな疾患により生じる歯痛
- 悪性リンパ腫や肺がんなどの悪性腫瘍や、動脈解離などの疾患で、関連痛として歯痛が出る場合があります。
治療は原因に応じて行われます。当院では、患者さまそれぞれの状態を丁寧に見極めながら、適切な治療につなげていきます。原因と考えられることによっては専門の医療機関を速やかにご紹介いたします。